大阪難波「アラビヤコーヒー」に行った感想
私がコーヒーを嗜む場所といえば、これまではオシャレなカフェがほとんどでした。しかし、昨年にふと立ち寄った老舗のムードやメニューの際立った個性に惹かれ、今では純喫茶にすっかりハマッています。
特に注目しているエリアは個性的な店が集まる大阪ミナミ。梅田周辺よりも歴史が長い店が多いうえに外観が魅力的な路面店が多く、喫茶店好きには散策するだけでも楽しい街です。
その豊富な選択肢の中でも利便性が高い店を探るために難波駅周辺をサーチしてみたところ、アンテナに引っかかったのは「アラビヤコーヒー」。年季の入った風格のある佇まいとイカつい?アラブ風の中年男性をあしらったロゴから独特のオーラが放たれています。
ちなみに、ポスターに書かれたキャッチフレーズは「アラビヤがないなんて珈琲がないも同然。やっぱり、アラビヤがナイト」。シャレが効いているところも大阪ならでは…?
道順さえわかれば大阪難波駅からは徒歩5分もかからないうえに、吉本の劇場やビックカメラがある千日前や法善寺横丁からも至近とアクセスは申し分なし。ならばと、そのポテンシャルを確かめるべく入店することとしました。
アラビヤコーヒーの店内
使い込まれた木製のインテリア、重厚なメニューボード、充満するコーヒーの香り…。店内は古き良き喫茶店のムード満点です。特に味があるカウンターの椅子は、何と先代マスターの手作りと聞いて驚きました。
カウンター席が6席に4人掛けテーブルが4卓とこじんまりしたお店ではありますが、そのぶんマスターとのトークを楽しむ常連さんも多数。「久しぶりですやん!」と、マスターのフレンドリーな声が入店する客に何度も掛けられます。
それならまだわかるのですが、顔なじみの客同士が再会して相席でコーヒーを…という場面があったのにはちょっと驚愕。まるで立ち飲みバー…?
とはいえ、一見さんが訪問しづらい空気は一切ありません。当日も観光のついでに…という方も何組か訪問されていました。歴史あるお店の雰囲気は写真映えもよく、大阪の見処としても成立しています。
ときおり、客同士の会話よりも店員同士の笑い声がお店に響くのもご愛嬌。こんな人情味があるスタンスこそ、同店の魅力なのでしょう。ちなみに、ショーケースの中にはサインボールが多数ありました。大阪都心の憩いの場として野球選手にも人気があるようですね。
店内に漂うコーヒーの香りから予想はつきましたが、メニューは豆からセレクトできるコーヒーが中心。軽食はケーキとパン類というシンプルな構成でした。
小腹が空いたこともあり、玉子焼きを挟んだホットサンド「アラビヤサンド」(620円)とアイスコーヒー(470円)を注文します。
このアラビヤサンドは、近隣にある大阪松竹座で活躍してきたベテランの役者・芸人にも人気の名物のようです。期待感が高まります!
と、その前にカウンターに置かれたゆで卵をいただくことに。
殻にはあのアラブ人ロゴが…。この仕上がりの度合いが狙いなのか、たまたまなのかわかりませんが、メチャクチャ柔らかくてびっくり。
黄身の中央の部分を除いてほぼ固まっているのですが、ゆで卵状態になってすぐに取り出した?ようなソフトな口当たりで◎。ゆで卵ひとつでこだわりが感じられて、あためてテンションが上ります。
アラビヤコーヒーで注文したアイスコーヒー
しばらくしてアイスコーヒーが到着。アラブ人のロゴからイメージされる深み100%の男らしい味かと思いきや?
メチャクチャ優しい風味ではありませんか!
ただ、喉に通してみるとコーヒーの香りがしっかりと口に広がります。かなり飲みやすいバランスなので「いつもはラテが基本…」なんて人にもマッチするでしょう。このギャップ、たまりませんね!
ちなみに、深煎りが基本だった開業当時は客からの指摘が入ることもあったようです。それでも、この味を半世紀以上も守り続けてきたアラビヤコーヒーのマスターには脱帽ですね(ホームページを拝見すると喧嘩をしたこともあったのだとか…)。
アラビヤサンド
そして、待望の「アラビヤサンド」が出来上がりました。こんがりと焼けたパンに挟まった玉子焼きは厚みがあり、中には刻まれたハムがたっぷり。なかなか食べ応えがありそうです♪
さっそく一口食べてみると…?んん〜、絶品です!
ハムの旨みとややダシの風味が合わさった玉子焼きは表面がこんがりと炒められ、旨みと香ばしさで風味がとても豊か。また、牛乳が加えられているのか食感がフワフワ。
この玉子焼き単体でもかなり優秀ですが、味の要は玉子焼きに塗られたソースだと確信。ケチャップにマスタードがしっかりと効いて他では口にできない味わいでした(辛くはないですよっ)。ソースと玉子焼きの両方に加えられた?(憶測です)バターも味に広がりを持たせるキーになっていたかと思います。このアラビヤサンドにコーヒーの組み合わせは鉄板ですね。
アラビヤコーヒーで注文したホットコーヒー
その後、もう少しゆっくり過ごそうとホットコーヒー(450円)を注文しました。
こちらもマイルドの範疇ではありますが、氷が入っていないぶんアイスコーヒーよりも香味がしっかりとしています。アラビヤコーヒー特有の上品な香味を楽しむならホットがベターだと私は感じます。
ただ、ブレンドの他にはブラジル・コロンビア・キリマンジャロ・マンデリン・モカなども有り(520~570円)。深みがほしいという方はブラジルやマンデリンなどを選択するのもいいですね。
逆に、さらに苦み(渋み)を抑えた味わいと豊かな香りを楽しみたいというならダッチコーヒー(550円)もオススメ。しかし、こちらは数量が限定されているので、味わうなら早いお昼までの訪問が吉です。
なお、他にも気になるメニューがいくつかありました。特に次の2メニューは再訪時に注文しようと目論んでいます。
◎フレンチトースト(450円)…4枚切りよりも分厚そうなパンに、表面が黄色くなるほど卵を染み込ませて炒めた一品。卵が届いていない部分のフワフワな食感と、卵が染み込んだ部分の濃厚な味わいのコントラストが特徴のようです。12等分にカットされているから友人と1皿注文なんてのも有りですね。味はメープルシロップとシュガーの2種類。最近では両方という方が増えてきているそうです。シュガーは溶けやすいパウダータイプをチョイスされている点も見逃せません。
◎クリームソーダ(570円)…一般的な緑色のソーダではなく、同店は何と青色。味はブルーハワイ風で、初めてなのに?懐かしい味わいが楽しめるそうです。バニラの味が濃厚なアイスクリームも人気の秘密。
その他、軽食メニューではホットケーキ(500円)やハムとチーズのピザ風トースト(700円)が人気のようです。前者はアラビヤコーヒーのマスター自らが焼き上げるため不在時は対応不可。
なかなかのこだわりようですね。今流行りのパンケーキとは異なる、バターとメープルの風味を生かした素朴な味わいが楽しめます。2枚重ねでボリューム感も上々です。
そして、バタートースト(200円)はアラビヤサンドと同じ極厚タイプです。なお、アラビヤコーヒーの常連さんの中にはグラニュー糖をかけて食べる方も多いそうです。確かに美味しそうだ…。
他にもフランスの伝統的な焼き菓子「カヌレ」、くるみとレーズンが入ったココア風味のビスケット「ビスコッティ」なども要注目。前者は外側は香ばしく焼き上がっているものの中はしっとり、後者はサクッとした食感が特徴の堅焼きタイプのようです。
これらは100~200円とリーズナブルなのでコーヒー+αで楽しみたい人には最適です。ただ、こちらはアラビヤコーヒーのレギュラーメニューではなさそうなので、品切れの場合はあしらからず…。
アラビヤコーヒー初訪問で感じた魅力は「人情味」です。老舗の喫茶店となると常連ばかりで入店しづらい店舗も多いものですが、アラビヤコーヒーは気さくな店員さん達が演出する良好なムードが特徴的。
そして、それに呼応した明るいお客さんが集まるというポジティブな空気に包まれていました。となれば、賑やか過ぎて落ち着いてお茶もできない…と心配に思うかもしれませんが、そこは本格コーヒー処なので問題なし。
居心地のわるい野暮なタイミングはなかったことも付け加えておきます。コーヒーと読書がセットという方もお気軽に。ただ、お客さんが混雑する時間帯は席を譲る、または追加注文するぐらいの気概は持ちあわせておきたいものですね。
また、アラビヤコーヒーの先代マスターのメッセージやキャッチフレーズが店頭の看板やポスターで目にできる点もお店の好印象に繋がっていると感じます。
アラビヤコーヒーはどういう店なのか?
このあたりをきちんと発信されていれば、一見さんも安心感が高まるに違いありません。週末は夜遅くまで空いているのも嬉しい限り。思い思いのプランで老舗コーヒー店の味をお楽しみ下さい。
アラビヤコーヒー基本情報
電話:06-6211-8048
URL: http://arabiyacoffee.com/
住所:大阪市中央区難波1-6-7。
定休日:年中無休
営業時間:日~木曜10~19時、金・土・祝前日10~22時
喫煙:全席喫煙
アクセス:阪神・近鉄大阪難波駅、御堂筋線なんば駅をおりて千日前通り15番AまたはB階段から地上へ。御堂筋を少し北上してナンバヒップスの角を右折。60㍍ほど直進。徒歩5分。南海難波駅からは徒歩8分、JR難波駅からは徒歩15分。